ビットコインをはじめとした仮想通貨の相場暴落が話題を呼んでいます。短期間のうちに資産価値が半分以下になってしまった人は珍しくなく、仮想通貨バブルが崩壊したと指摘する人もいます。
仮想通貨相場暴落の要因の一つと考えられているのが、「テザー疑惑」です。テザー疑惑を理解することが相場の急変を理解する一助になる可能性があります。
仮想通貨目次
テザー疑惑のポイント
・テザー社が発行量と同じだけのドルを保有していない疑惑が浮上
・監査法人の契約打ち切りなどで疑念が広まる
・他の仮想通貨にも疑念が波及
そもそもテザーとはなんなのか?
テザーは仮想通貨の一つですが、大きな特徴があります。それは、テザーとアメリカドルの価値が連動していることです。
仮想通貨は現実の資産との紐付けがないものがほとんどで、その分価格上昇を見込めるのが特徴です。一方で、価格の急騰や暴落は投資や流通の面で障害になる可能性があります。
テザーは仮想通貨の欠点を改善するために作られた仮想通貨の一つです。テザーの価値はアメリカドルと結び付けられていて、テザーを交換しようと思えば同じ額のアメリカドルに交換できることになります。
テザーの魅力は実際の現金よりも取り扱いが簡単で、送金などの手数料が安いことです。仮想通貨であるため電子取引で決済が可能で、札束を輸送するコストなどを削減できます。
現金は輸送や保管のために警備を厳重にしなければならないなど、維持費がかかるのがネックです。そのため、アメリカドルと結びついた仮想通貨に変え、様々な商取引などに利用できることは大きなメリットになるのです。
テザーを発行するテザー社が、テザーの発行額と同じドルを保有することでこの価格の相関関係は維持されています。
テザー社の信用があって成り立つ仮想通貨でもあるのです。
テザー社が同じ金額のドルを持っていない疑惑が浮上
テザーは非常に人気が高い仮想通貨の一つで、ほとんどアメリカドルとかわらないレートで取引されていました。
送金などの手数料を考えれば、テザーで取引をした方が割安になる可能性がある水準です。
一方で、テザーの需要が高まれば実質的な価値が高まる可能性があります。そのため、様々な人が利用目的や投資目的でテザーを購入したのです。
しかし、テザーのビジネスモデルに疑問を持つ人も多く、様々な議論が存在しました。特に疑惑が深まったきっかけになったのが、テザー社の公式発表です。
2017年9月にはテザー社が実際にドルを保有していることを実証できるとする文章を公開し、火消しを行おうとしました。
しかし、提携金融機関の欄が塗りつぶされていることや急ピッチでテザーの発行量が増えていることからさらに疑念が広まる形になったのです。
テザーの発行量を統計的に分析し、人為的な介入がなかったかチェックする人も現れました。
そして、テザーの発行時期とビットコイン相場の関連に不自然な点が見つかったことから、テザー社はテザーの発行で得た収益をビットコインの購入に当て、価格の吊り上げに使っているのではないかという疑惑が噴出したのです。
この指摘自体が誤まっているという論文も発表されていますが、騙されている可能性があれば追及せざるを得ないのが人間です。
莫大なお金を投資している人もいるため、テザー社にコメントを求めることは自然な成り行きと言えます。
2017年11月にはハッキング被害により不正にテザーが引き出されるなどの事件もあったため、リスクに敏感になっている人が多かったという事情もあります。
金額は3095万ドルと、日本円換算では30億円を超える金額が引き出されたことになります。テザー社は不正に引き出されたテザーを換金できないようにするとコメントしていますが、セキュリティ上の疑念も生じた形になります。
しかし、テザー社は自社のドル保有額の正式なコメントを拒否している他、2018年1月には監査法人との提携を解消するなど疑念が膨らむ行動を続けています。
また、1月31日にはアメリカの商品先物取引委員会が12月6日に召喚状を送っていたことも判明しました。
不正があったことかどうかを確認する取り組みが進んでいて、疑念はむしろ広がっている状態なのです。
仮に不正が合った場合は、テザー社の公式発表時点で総発行額が22億8000万ドル(1ドル110円換算で約2.5兆円)の仮想通貨で不正が行われていたことになります。
疑念は他の仮想通貨にも波及
注意したいのは、テザーへの疑念が他の仮想通貨にも波及していることです。
テザー以外にも法定通貨と結び付けられた仮想通貨や、金などの金融資産に結び付けられた仮想通貨は存在します。
また、実用化が進んでいる仮想通貨は一握りで、その多くが将来性に期待されているからこそ価値が高まっている状態です。
その実体を確認できる方法が存在しない仮想通貨が多く、疑念を晴らす手段自体がない場合がほとんどなのです。
第三者機関の調査を受け、定期的に情報や資産を公開している仮想通貨運営団体も存在しますが、組織ぐるみの不正も含めて疑われれば無意味になります。
そのため、仮想通貨の投資を切り上げる投資家が増え、仮想通貨全体の価格を下げる要因にもなっていると考えられるのです。
投資の基本は、リターンに見合うだけの金額を投資し、危険と思える要素があった場合はお金を引き上げることです。
仮想通貨自体への疑念の広がりが、価格の暴落を招いたと推察する人も多いのです。
金融商品の存在も理解するとさらにプラスに
投資家がお金を引き上げただけで、ここまで価値が下がるのかと疑念に思う人もいるはずです。
ポイントになるのは、投資家は個人だけとは限らないことです。銀行や投資会社などが設計した金融商品の中にはビットコインなどの仮想通貨が含まれるものが存在し、中には仮想通貨をメインにした投資信託すらあります。
ビットコインをはじめとした仮想通貨の中には、短期間で大幅な価格の上昇を見せたものが含まれます。
1年で価値が数十倍、数百倍になったものも存在するほどです。少額の投資であっても莫大な利益を生み出す可能性があり、金額が増えるほどその可能性が高まることになります。
投資信託をはじめとした金融商品の一部は、運用資産の中に仮想通貨を含めることで大きなリターンを確保していました。
リスクを低くとって、金融商品の1%以下の額を仮想通貨投資にあてただけで、莫大なリターンが見込める可能性があったためです。
投資会社などはこういった莫大なリターンを元に市場から資金を調達し、一部は実際に高いリターンを実現していました。しかし、相場の急変でリターンの高さが大きなマイナスを生むかもしれない状態になっているのです。
投資の基本を繰り返しますが、損失が見込まれる場合や、価値が下がるリスクが高い場合は資産を引き上げるのが基本になります。
複数の金融機関や投資会社が、一斉に仮想通貨を見込んだ金融商品を処分した場合は、大量の資金流出を招く可能性があります。
高いリスクの商品であれば、敏感に反応しなければ収益自体がなくなるどころか、投資会社や金融機関の信用までなくしてしまう可能性もあります。
また、先行して投資をしている会社であれば、多少価格が下がったところで利益が確保できるのもポイントになります。
すでに儲けを出している企業が、多少目減りをした時点で資産を引き上げている可能性もあるのです。
テザー疑惑の真相まとめ
テザー疑惑の真相は解明の途中であり、実際に仮想通貨暴落の引き金となったかは不明です。
要因の一部ではあるものの、全てではない可能性も存在し、偶然タイミングが一致しただけの可能性もあります。仮想通貨に限らず、相場の変動は専門家でも分析しきれないことがあるのです。
ただし、投資が存在すれば、その投資は様々な分野に波及します。
仮想通貨投資の損失を埋めるために、株式や債券などの金融資産を手放した企業や個人が存在する可能性もあるのです。ただ一つの事柄にこだわってしまうと、疑惑の本質が見えにくくなってしまいます。
テザー疑惑の中でもっとも恐ろしいのが、テザー社が投資者を騙し、その資金を持ち逃げしたことが確定し、その不安や恐怖がさらに市場に広がることです。この場合は仮想通貨の投資環境がさらに悪化する可能性があります。
一方で、テザー社の問題と楽観的な見方が広がり、相場が上昇に転じる可能性もあります。
重要なのは仮想通貨投資や取引のリスクを踏まえ、必要に応じて資産を手放すなど相場の急変に備えることです。
投資する仮想通貨自体を選ぶなど、購入する人の危機意識が問われているのです。